夢だけじゃ 夢だけが

恋することが世界の平和♡

8月に読んだ本

 夏は暑いというだけで気が滅入るのに、今年はコロナの感染者は増える一方だし、ツイッターを開くと暗いニュースばかりで余計に気持ちが落ち込んでいた気がする。

エアコンの効いた部屋にいても本を読む集中力は生まれなくて、読書は夏には向かない。

 

◾️『ボーイフレンド演じます』著:アレクシス・ホール


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 偶然、本屋さんの新刊コーナーに平積みされていて出会った一冊。

 ロックスターの両親をもつせいでいつもパパラッチに追いかけられ、数々の痴態を撮られてきたルーク。慈善団体の職員という立場にはその私生活が不適切なため、上司から信頼できるパートナーを見つけるようにと釘を刺される。

そこで候補に上がったのは真面目で勤勉な法廷弁護士のオリヴァーだった。

 

 まず、主人公の両親がロックスターなのはイギリスっぽい(本作はイギリスの作品。これが日本だったら伝統芸能の演者だったりするのだろうか)

作中も日本人にはなかなか馴染みのないブリティッシュジョークが多い。それでも、ひとつひとつに解説をつけてくれているのでありがたい。ハリーポッターにちなんだジョークなんかもイギリスだなぁとか思った。

 正直ルークがいくら酔いつぶれて醜態をさらそうが、悪いことをしてるわけじゃないんだし私生活は好きにすればいいじゃん...マトモな恋人がいるからってその人がマトモかどうかの判断には関係ないだろと読んでいて思って、欧州とかってもっとプライベートと仕事がハッキリ分かれているものだと思った。読んでいて日本のBL漫画みたいだなぁとか思った。

それとも、海外はカップル文化というし恋人がいるかどうかがその人を判断する材料なのかな。結局、読み進めていくとルークの勤める慈善団体が保守的な富裕層に支えられているのが分かるので、遊び人というだけでなくゲイであるということにも眉を顰められるような仕事だったのだけど。

 

正直、色々最悪な人たちにガツンと言い返してスカッっとさせる演出はあまり好きでないのだけど、ルークがオリヴァーの両親のルビー婚で親族たちに言い返したところは思わずグッときた。はじめは全くうまくいかず噛み合わなかった二人が、物語を読み進めているといつの間にか相手がピンチの時に必ず支えあうようなカップルになっている。

オリヴァーの叔父が、オリヴァーがゲイであることを面白いことであるかのように揶揄したところは読みながら一緒にムカついていた。

それでも、オリヴァーが両親を含め親族のことを悪く言わないところに、人として本当に感謝しているのだとよく伝わってきた。家族との関係を変えることは難しいことかもしれないけど、いつかオリヴァーが本当の意味で家族と向き合うことができたならいいなと思う。

 

 それと、ルークの友人たちが個性豊かなところも魅力的だった。往年のラブコメ映画などでは「マジカルゲイ」問いう言葉が生まれたが、ゲイが主人公ならその親友は誰なのか?となる。答えは「ヘテロもゲイも色々いる」だ。

作中でオリヴァーとの関係が拗れたルークが言った「ぼくがショックから立ち直るのをいつも助けてくれなくてもいいんだよ」という言葉に対して、親友のブリジットは「友達ってそういうものでしょ。お互いに相手がショックから立ち直るのに手を貸したり、トイレではいているときは髪をもちあげたりするのよ。」と答える。相手がピンチのときに手をさしのべてくれる親友はなにより尊い存在だ。

 本作はルークとオリヴァーが付き合うところで一旦終わるのだが、どうやら本国では続編も刊行予定だということで続きを読めるのが楽しみだ。

そして、欲を言うとこの作品のようにラブコメでしっかり楽しいけどロマンスもしているレズビアン小説が読みたい。