夢だけじゃ 夢だけが

恋することが世界の平和♡

5月に読んだ本

 毎月の締めくくりに書いているブログだけど、5月は特に激動でずーっとハイテンションにギアが入ったような状態だった。

車の運転をし始めて7、8年経つなか、初めて交通事故に遭った。幸い?こちらに過失もなく、お互いに怪我もなかった。相手の方も、しっかりした人だったので比較的スムーズに手続きが済んだ事も幸運だった。事故の後、検査のために初めてMRIなんかも撮りにいった。

更にその数日後には仕事で突然、人の死に目に遭う事もあった。人が亡くなる仕事をしているので、これまで数えきれないくらいのお別れを経験したけど、やっぱり突然遭遇すると心が揺らいでしまう。

そんなこんなで5月はあっという間に過ぎてしまった。

 ちなみに検査をした結果、事故とは無関係な首のヘルニアが見つかった。これが怪我の功名というものなのか。

 

◾️『旅するカラス屋』著:松原始

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 小さい頃から動物が好きだった。子どもの頃は、ディズニーなら『ライオンキング』、ジブリならば『もののけ姫』と、動物が出てくる映画を何度も繰り返しみていた。特に、犬やイルカが好きで、カラスもその中の一つだった。今になって思うと、頭の良い動物に惹かれるものがあったのだと思う。

今でもカラスの姿をみつけると、ついつい観察してしまう。たまに、運転中に車道から全然逃げないやつなんかもいる。危ない。

 『旅するカラス屋』とタイトルの通りカラスは世界中(一部地域を除く)にいるらしい。

面白いのは、カラスと言うと「黒」のイメージだけど世界には白黒の柄のあるカラスなんかもいて、「黒」がカラスのアイデンティティではない事を知った。

 作中には世界中のカラスが出てくるけど、読んでいて一番気に入ったのは知床にやってくるという「ワタリガラス」だ。

全長63センチ、翼を広げれば120センチにはなる。街中にいる「ハシブトガラス」が全長56センチ、翼開長が100センチなのでその大きさが良く分かる。

とても頭がよく、紐の解き方を覚えたり、他者に見られていると餌の隠し方を変えたりするらしい。

北欧神話にも登場しておりオーディンに付き添うフギンとムニンもワタリガラスだ。本の中でも、神話での登場の仕方がすこし紹介されており「カラスが石から人間を作った」だとか「石が丈夫過ぎたから、適度に死ぬように落ち葉から作るようにした」だの、そちらもかなり気になるお話だ。

生息域はユーラシア大陸からアメリカ大陸まで広く分布しているが、日本では北海道や秋田でしか見れないため、なかなかお目にかかれない。つくづく北海道は本州とは独立した動物の生態系をもった地域なのだと思った。

兼ねてからエゾたぬきがとても好きだったので、ますます北海道に行ってみたくなった。

そして結局、「コロナさえなければ、、、」と思うのであった。

 

◾️『エレジーは流れない』著:三浦しをん

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 「一番好きな作家は?」と聞かれたら間違いなく三浦しをん先生を挙げる。小説、エッセイと、どれをとってもズバ抜けて面白い。しかも、どの作品も人間味があって、読んでいて嫌な気持ちにならないところも好きだ。

高校生の頃に『まほろ駅前』シリーズを読んでから今作まで執筆された全ての作品を読んでいる唯一の作家だが、小説家としての「色」はそのままにきちんと進化している所も信用出来る。

 『エレジーは流れない』では、男子高校生たちの青春群像劇という分かりやすいテーマながらも、主人公には母親が2人いるという設定だ。その2人の母親同士は恋愛関係にはないが、間違いなく絆が生まれており助けあっている。

初めはお互いの利害が一致したから、かもしれないが偶然知り合った他人同士が、お互いに助け合って生きている事が物語の中で書かれていると嬉しくなる。しかも、2人の母親は旦那の浮気相手の若い女性と旦那の本妻という、今までだったら敵対する事が当たり前に書かれていたであろう関係性だ。人間は血縁やコミュニティを超えて手を取り合う事が出来る。人間の良心と優しさが、しをん先生のキャラクターには宿っていると思う。

そして、少しお節介すぎるくらい面倒見のいい商店街の人たちは、今の時代からしたら古くさく感じるかもしれない。だけど、古くさい物語にならないのは、しをん先生が今の社会を良くみて新しいモノと古き良きものを上手く繋いでいるからだと思う。

 

◾️『令和GALSの社会学』著:三原勇希 あっこゴリラ 長井優希乃

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 音楽ストリーミングサービス、Spotifyにて人気のポッドキャスト『POP LIFE』を書籍化した本作。メンヘラからフェミニズム、エンパワーメントをガチ語り、というテーマの通り社会のことから自身のことまで3人の対談形式で書かれている。

ラッパー、教員、タレントという異色の組み合わせながら、日常のモヤモヤなんかを上手く言語化していて読んでいるとスッキリした気持ちになる。

特に、PART 2「優希乃の回」"言葉ってフェイク" の章で三原さんが"「生きてるだけで尊い」って言葉は自分には全く響かないんだよね"
と言っていて、思わず本当そう!と言いたくなった。

私は頑張って仕事も出来てるし、生きている以上の「楽しいこと」をしているのに何で「生きてて偉い」になっちゃうんだろうってずっと思ってた。「私の価値って「生きている」以外にないのかなぁ、なめんじゃねえぞ!」とついつい思う事もあった。

でも、この思想って自分に向く分にはいいけど「生産性」であったり「能力主義」的な思想に直結するから、これが他者や社会に向いてしまったらとても危ういし暴力的だなぁともわかっていて。そこの矛盾とかモヤモヤはずーっと自分の中にあって。

そして、三原さんの問いかけにあっこゴリラさんが「私さー、自分自身に対して、常日ごろ生きているだけで尊いって思ってるわけじゃなくて、思うときはあるの。それは自分に自信があるからではなくて「生きていること」が尊いってことなの。私は今生きている、私の命に価値があるうんぬんではなくて、私は今生きていて死んだら終わりで生きている以上は何かができるって感覚。<中略>生きているから何かが出来る。そういう意味での、生きてるだけで尊いって感覚」と答える。なるほど、「生きてて偉い」じゃないのか、「生きているから」偉いのか、と長年のモヤモヤがスッキリした。本当にメンクリのような本だなぁと思う。言葉を扱うラッパーだけあって、あっこゴリラさんの「"言葉はフェイク"だからその言葉自体をどう受け取るかも各々のスキル」という話には頷ける。そう考えると、まだまだ自分は言葉を理解して上手く受け止めるスキルが足りないなぁと思った。

 

◾️『幻のアフリカ納豆を追え! そして現れた<サピエンス納豆』著:高野秀行

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 まず、自分の無知を恥じたいのだが「納豆といえば水戸」という勝手なイメージがあり日本では納豆は水戸でしか作られていないのだと思っていた。もちろん、冷静に考えれば日本国内の全ての納豆を水戸で賄ってるわけはないので、全国に工場があることは予想がつくが、水戸にしか納豆は存在しないと思っていた。何を言っているのか分からないと思うが、自分でも何で「水戸=納豆」とばかり思っていたのか。

 そんな納豆初心者の私にも優しく深く納豆ワールドを教えてくれるのが高野先生の納豆シリーズだ。(勝手に納豆シリーズと呼称する)

作中にも、みな自国の納豆が一番だと話し、他国や他の地域の納豆に対しては「あんなのは納豆ではない」と言う人々が登場し面白い。食事のメインディッシュでもなく、鮮やかな派手さもない納豆だが人は皆納豆に並々ならぬプライドを持っている。

本作はアフリカ納豆がメインという事もあり、危険な西アフリカを訪れている。

世界各国を訪れ、危険な旅もしてきた高野先生だからこそ信頼は出来るがやっぱりイスラム過激派が台頭する地域での取材は読んでいてヒヤヒヤする。

 ちなみに読んでいて驚いたのだが、アフリカにも「味の素」が進出しており旨味調味料として使われているらしい。しかも、「アジノモトを使う主婦はレイジー(怠け者)だ」言う人も登場しており、生活環境や地域が違くても同じような意見の対立って起こるんだなぁと感心した。

ちなみに、私も納豆は好きだが普通の納豆よりも挽き割り納豆が好きだし、かき混ぜれば混ぜるほど美味しいという納豆をほぼかき混ぜる事なく、ご飯にかけずにそのまま食べる食べ方が一番好きだ。なんというか、納豆に失礼な食べ方しかしない。

 

◾️『棚からつぶ貝』著:イモトアヤコ

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  他人のエッセイを読むのが好きだ。特にエッセイだけを専門に書いているだけの作家などではなく、本業は別の事をしている人が書くエッセイが好きだ。エッセイ用にこしらえたネタではなく"日常"を文字にした文章。それを読めるというのは自分では知り得なかった人生をつまみ食いしているような贅沢がある。

 バラエティーやドラマなどで活躍するイモトアヤコさんのエッセイ。芸能人のエッセイは、一般人にはなかなか体験出来ない事と、一般人と同じような事を考えている日常とが入り混じり特に面白いと思う。

特にイモトさんは海外でのロケが多い方なのでワクワクする。

南極で年越しをしたこと、南米の山を登ったこと、ミャンマーで出会った少年達のこと。どれも普通の人では出来ない体験だろう。と、思えば一人旅の思い出や大好きな安室奈美恵ちゃんへの想いなどなど、普通の女性なんだなぁと思う事も書かれている。でも、全ての文章に共通することだが、本当にイモトさんの周りにいる方が素敵な人が多いと言うことだ。女優さんから同じ芸人さん、スタッフさんにご家族のこと。イモトさん自身も周囲の人の恵まれていると書かれている。

でも、それにはきっとイモトさん自身が素敵な人だからこそ、周囲にもいい人が集まってくるんだろうなぁと思う。そして、エッセイを読んでいると、イモトさんは周りの人の良いところを探すのがとても上手だと気付く。

面白い体験や変わった出来事だけでなく、ほんわかする様な優しい文章に思いがけず癒された。