1月に読んだ本
コロナが流行してから自由に外出が出来なくなり読書量が増えた。具体的にいうと、2019年は年間20冊程度の読書量だったのが、去年は43冊読んでいる。今年も「本を読みたい欲」が続いているので、せっかくならばツイッターや日記に書いている読書記録を一つにまとめておこうと思う。
ちなみに、2020年の個人的年間ベスト10冊。
- 『愛なき世界』
- 『掃除婦のための手引き書』
- 『ハイパーハードボイルドグルメリポート』
- 『恩讐の彼方に・忠直卿行状記』
- 『ピエタとトランジ』
- 『向田邦子ベスト・エッセイ』
- 『ぼそぼそ声のフェミニズム』
- 『ザリガニの鳴くところ』
- 『三体II 暗黒森林 下』
- 『読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか』
(順不同)
10冊に明確な順位はないものの、一番心に残ったのは『ザリガニの鳴くところ』だと思う。
人生で読んだ本の中でも特別になる一冊だった。読み終わった後、感想を残す気力もなくなるくらい圧倒的で悲しくて美しい物語だった。
物語の真実は主人公・カイアと読み終わった私だけの秘密にしていたい。
ただただ、誰かを殺したいくらい憎んでいる人に許しの心を求める事は、誰に出来ようか。
その他にも話題になった『三体シリーズ』や『掃除婦のための手引書』からフェミニズムについての本まで自分の興味があるジャンルの本を満遍なく読めたと思う。
■1月に入って読んだ本
『ババヤガの夜』王谷晶
女二人、暴力、血、犬などどこをとっても自分の好きな要素ばかりだった。
ヤクザのお嬢様の運転手に無理矢理、採用された主人公・依子とお嬢様・尚子の物語。
近年、映画でも本でもシスターフットに関する物語が増えているが、この物語もそこに入ると思う。恋愛関係でなくても、お互いいがみ合っていても、ピンチの時は助けるし協力する。その関係が恋人家族友達と名前をつけられるものでなくても誰かと人生を共に出来る。
昨年読んだ『ピエタとトランジ』でも女の子二人が歳をとっておばあちゃんになるまで描かれていたが、『ババヤガの夜』でも二人がおばあちゃんになっている所で物語が終わる。タイトルの「ババヤガ」は老婆の妖怪だ。女の人生が10代20代で終わるわけではない事がエンタメで描かれる事が喜ばしい。
『保健室のアン・ウニュン先生』チョン・セラン
目に見えない色々なモノが集まってしまう私立M高校で養護教諭として働くウニョン。ひと知れず、怪奇現象や不可解なモノと対峙する。
怪奇現象というと、ついついホラー的な怖いものを想像してしまうけど、文体や描写から軽快さが出ていて、深刻さがなく可愛らしさすら感じられる。ウニョンも漢文の先生インピョも完璧じゃない性格に人間味を感じる。けれど、未来ある若者達の平穏と安全を守ろうと奮闘する姿は大人として正しい。
『我々はみな、孤独である』貴志祐介
ミステリー、SFなど幅広く手掛ける貴志祐介の7年ぶりの長編小説。
探偵・茶畑徹朗の元に舞い込んだ、「前世で自分を殺した犯人を探して欲しい」という依頼。調査を進めるにつれて、茶畑自身にも前世の記憶が蘇り始める。
正直、事件の結末が荒唐無稽すぎて読み終わった後にとても戸惑った。登場人物もヤクザにメキシコの麻薬カルテルとかなりバラエティーに富んでおり、驚くばかり。
しかし、その荒唐無稽なバラエティーに飛んだ内容を一つにまとめ、「一体どうなるんだ?」と結末が知りたくなってしまう文章力はさすがプロの小説家。
ちなみに、この本を読んでいた間は、夜寝るたびに変な夢を見る事が多かった。
『マイ・シスター、シリアルキラー』オインカン・ブレスウェイト
舞台はナイジェリアの都市、ラゴス。看護師のコレデには美人な妹、アヨオラがいる。美人で快活、誰にでも好かれるアヨオラは何故か付き合った相手を必ず殺してしまう。コレデはアヨオラを守るため殺人の隠蔽工作をする。
とにかく、読んでいるとコレデ苦労してんな〜〜という労いの気持ちになってくる。だって、看護師の仕事を真面目に頑張ってて、妹からは「ねぇ、コレデ殺しちゃった」と電話がかかってきちゃうんだよ。
その上、お母さんからとかは「あなたは姉なんだから妹の世話をするのは当たり前」みたいなこと言われるし。大変だなぁ。
私も姉妹だけど、妹だからもしかしてうちの姉もこういう気持ちだったのかなぁ。高校生の頃、姉が泣きながら母親に「あいつ(私)は妹だから甘やかされててずるい!」と泣きついていたのを思い出した。
でも、アヨオラが彼氏を殺してコレデを困らせるような子でもなんか憎めない。
アヨオラが付き合った人を殺してしまうのは、姉妹の父親との関係に起因するもので、そこには家父長制によるしがらみが関わってたりする。そう思うと、アヨオラは加害者なんだけど、被害者でもあるんだよね。
『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』宮澤伊織
SF百合小説として名高いシリーズの第一巻目。裏側という特殊な世界で、女子大生・紙越空魚は仁科鳥子と出会う。
裏側の世界には、ネットで有名な怪談に出てくる危険な存在たちが出現する。「くねくね」や「きさらぎ駅」など私でも知っているような有名な怪談から、「須磨海岸にて」などネットをしている人しか知らないような怪談まで出てくる。
最近、SF×百合がちょっとしたブームだけど、そのジャンルの先駆けともいえる作品。(伊藤計劃の『ハーモニー』とかもあるけど)
SFとして裏世界が単純に面白いのと、ちゃんと「百合」として確立されているところがいい。単純なキャラ萌えラノベじゃなくて、空魚と鳥子の感情のやりとりがちゃんとしてて百合の質も高い。というわけで、現在3巻まで読み進めていたりする。