夢だけじゃ 夢だけが

恋することが世界の平和♡

久しぶりの読書ログ

一昨年は12ヶ月連続読書記録を頑張ってつけていたけど、去年は結局書くのを辞めてしまった。理由は単純で、作業時間に一冊でも多く本を読んだほうが楽しいからだったりする。

でも、結局どれだけ読んでもすべてを覚えておけるわけではないし、やっぱり忘れていってしまうから記録にしておいたほうがいいと思った。インスタとかで簡易的に記録をしていくのも考えたけど少しくらい大変なほうが「やってる感」があっていいかもしれない。

■昨年印象的だった作品

『ループ・オブ・ザ・コード』著:荻堂顕

疫病禍を経験した国が舞台の近未来。かつて世界的に大問題となる事件を起こしたその国は、国の歴史、言語、文化の全てを抹消された過去をもつ。コロナ禍と共鳴するようなフィクションの世界でも、疫病により取りこぼされていく声が存在する。

『おいしいごはんが食べられますように』著:高瀬隼子

芥川賞を受賞した作品ということでとても面白かった。他人の善意もある意味重荷になる瞬間がある。善意を受け取る側にもエネルギーを使うことが多くてしんどい。でも蔑ろにする事は人として許されない。

この小説の感想を漁っていたら、共感を示す人と

性格が悪いと感じている人が二分しているようだった。私は自分の心と感情が世間と乖離しそうになった時にそのズレを思い出せるようにこの本を大切にしたい。

『布団の中から蜂起せよ: アナーカ・フェミニズムのための断章』著:高島鈴

アナーカ・フェミニズムという考え方を初めて知ったけど、凄く自分にしっくり来たようにおもう。世間は少しづつ変わっているようないないような状態で、自分の心がすり減るばかり。自信を失ってしまう事ばかりだけど、自分の火を絶やさずに生きていきたい。私ももっと怒っていいよね、って思える一冊だった。

 

やっぱり読んだ本について考えるのは楽しいので、読書記録を続けようと思う。

12月に読んだ本

 結局2021年に間に合わず、最後の最後に12月に読んだ本について。

 

◇12月に読んだ本◇

■『心はどこへ消えた?』著:東畑開人

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  コロナが流行ってから、占いやスピリチュアルなものへの需要が増えたと聞いた。目に見えないものに怯えるのに、目に見えないものにすがるとはどういう事なのだろうかと思うが、結局は目に見えないものを強く信じているから怯えるし、すがってしまうのかと思った。

私も時々、自分の自信のなさに人生を他人に預けてしまいたくなる。そんなことを考えていると、いつか本当にスピリチュアルな感覚にハマってしまうのではないかと怖くなってくる。そんな現実離れした事じゃなくても、例えば本屋に売っている自己啓発本や他人のエッセイ本などに傾倒してしまうかもしれないと思っていて。

 

 12月は仕事の中で悩みがあり、それを誰にも相談出来ないまま悶々としていた。誰かに話を聞いてもらいたい、何か答えがほしいと思案した結果、ある程度カウンセラーとしての実績があり、経歴がハッキリとしている人の本ならば穿った見方をせずに読めるのではと思った。そこで手に取ったのが本書だった。

 私はずっと「自分自身の心をどれだけ大事にして良いのか」が分からなかった。分かりやすく言うと、「みんな我慢しているから」と大きな集団や物語の流れに心を投げるべきなのか、自分の気持ちを尊重するべきなのかが判断できなかった。

 この本は2020年5月から2021年に週刊文春で連載していたエッセイをまとめたものになる。コロナ真っ只中での連載だったが、作者は「これはコロナについての本ではない」と綴る。本当に問題なのは、大きな物語、数字たちに消されてしまう「心」だ。大きな物語の前では、一個人の心は軽視されてしまう。一体心はどこへ行ってしまったのか?

自分の「心」に向き合ったとき、とても苦しかった。こんなものなければ良かった、もっと大きな物語に身を委ね冷酷に生きれればどんなに楽だっただろうかと。

だけど、この「心」のお陰で私は誰かと繋がれた。この本を読んでいて「心」を大切にしていいと教えてもらった。

 

 最後に、出会いを意味する“Encounter"という言葉の語源は、「敵と出くわす」なのだそう。他者との出会いは、大きな喜びにもなるが、傷を負う可能性も秘めている。

しかし、敵かも知れない他者を受け入れていくことが私たちの心を深くすることがある。

2021年。

 コロナが流行って自分の中でも記憶が色濃く残ると思いきや、思い出になるような出来事が少なく、色々な事を忘れていく一年だった気がする。

 

■1月ー3月

 毎年恒例の浜崎あゆみのカウントダウンライブに参加予定だったが、直前に浜崎あゆみのツアークルーがコロナ感染し中止となってしまった。年越しを自宅で過ごすのは数年ぶりで、ライブの代わりにYou Tubeで公開された歴代のカウントダウンライブの映像を観ながら過ごした。毎年ライブに参加しているためか、年越しの瞬間というのはとても貴重でハッピーな一瞬だと思っており、今年も自宅にいながら知人たちにハイテンションなメッセージを送った。結果、極めて冷静で丁寧な返信をもらい恥ずかしくなったりもした。みんな大人になってしまった。

仕事では1月から新しい事業所に異動し、役職もつくようになった。不安もあったが色々な事に挑戦し、色々な人に出会う事が人生の経験になると考えるしかなかった。

 

●聴いていた音楽●

◆「We are Bulletproof:the Eternal」BTS

昨年に引き続きBTSの楽曲はよく聴いていた。とても美しい曲をベースに彼らの孤独とひたむきな強さを歌ったこの曲が響いた。JIMINの美しい高音ボイスが印象的。


[2020 FESTA] BTS (방탄소년단) 'We are Bulletproof : the Eternal' MV #2020BTSFESTA - YouTube

 

◆「春よ、来い」浜崎あゆみ

 あゆがユーミンの名曲「春よ、来い」をカバー。あゆの名盤アルバム「A BALLADS」の続きとして「A BALLADS 2」がリリースされた。名曲たちがひとつに集まっているのはもちろん、過去の曲たちが高音質で聴けるのも嬉しいところだった。何より、「春よ、来い」以外は既出の楽曲ながらもアルバムとしての完成度が高く、ベストアルバムを出してもクオリティーの高いものを作れる浜崎あゆみというアーティストの実力を感じた。

コロナも全く収まる様子がなく、絶望的な社会の中でそれでも希望を優しく歌ってくれるあゆの歌声にまさに春の暖かみを感じた。


浜崎あゆみ / 春よ、来い - YouTube

◆「夜天」女王蜂

 今年も女王蜂がどんどん活動の幅や回数を広げていて止まることのない一年だった。

女王蜂の曲にしてはキャッチーな「夜天」はここ1、2年の総括となるような曲で、半歩外側に立って女王蜂というバンドを歌っているようだった。

いつか終わりが来る事をわかっていながらも、不安定な電線の上を面白おかしく歌いながら歩くアヴちゃんが頼もしい。


女王蜂 『夜天(STARRY NIGHT)』Official MV - YouTube

 

■4月ー6月

 嫌々ながらも、新しい事業所で働きだんだんと環境にもなれてきた頃。少しだけ仕事も落ち着いてきて、気持ちに余裕が出ていたと思う。

5月12日に大宮ソニックシティにて「田村ゆかり LOVE♡LIVE 2021 *Airy-Fairy Twintail*」に参加してきた。

ライブ自体、昨年の2月に行ったあゆのツアー以来だった。ゆかりんとは、一昨年のツアー以来となった。

大宮ということで、群馬から比較的近いもののコロナの感染者数は変わらず増加しており、厳重な対策を行い参加した。手に触れるものは全て除菌し、外では一切マスクは外さない触らないを徹底。一ヶ所に留まる事も一切せずにライブに望んだ。ゆかりんのライブというと、ファンの大きな声援が特徴の一つでもあるが、もちろん全て禁止。ツアー初日ということもあってか、開演して一曲目までは立ち上がって観覧していいのか皆わからず、客席も座っていた。普通に考えたら立って見ようが座っていようがあまり関係はないのだけど、それだけみんな初めてだらけで不安だったのだと思う。

歓声が出せない代わりにファンは大きな拍手で応えた。アコースティックパートではライブの定番曲「fancy baby doll」を歌い、コールの代わりに手拍子で上手くリズムをとる客席とのやりとりに長い活動の中で培われた信頼関係をみることが出来た。

大きなコールが特徴的なゆかりんのライブでは、いつもコールがないアコースティックパートで客がぼっ立ちしてるだけという現象がよく起きていた。

音楽を聴く姿勢が「コールをする」しか無いのかよといつも思っていたが、手拍子で参加したりリズムをとるということが自然と行われていて感動した。

昨年はツアーを開催出来なかったため、アルバム2つ分をひっさげてのツアーだったがほぼほぼアルバム曲から構成されたセトリで、昨年分のツアーを取り戻すかのような攻めた構成に田村ゆかりの大胆なプロ意識を感じた。

 

 6月27日には「ayumi hamasaki MUSIC for LIFE ~return~」に参加。舞浜アンフィシアターにて開催された久しぶりのあゆのライブだった。人と距離を空けることが推奨された社会で、あゆはダンサー、コーラス、ストリングスという大所帯でステージを作った。この人はいつまでも生粋のエンターテイナーだと思った。ユーミンのカバー曲「春よ、来い」の歌唱が凄く良かった。

 

●聴いていた音楽●

◆「それは奇跡なんかじゃない」田村ゆかり

 今年リリースの「あいことば。」の収録曲。疾走感のある楽曲にサビの特徴的な歌詞の繰り返しは初めて聞いたときから印象的だった。

ライブで聴いた際、2番のAメロBメロの歌詞がとても心に響いた。ゆかりんはすごくネガティブな人でライブに関しても後ろ向きなことを言うけれど、長くライブが出来なかったことを寂しいと思ってくれていたんだと強く感じた。

「心はどこで守ればいい?」というフレーズは今年聞いた音楽のなかでもひときわ心に残っている。

 

ひとりでいると探している

ふたりで見てた虹の行方

記憶だけじゃ  時の隙間

埋められない

 

わずかな夢の結び目が

ほどけてしまいそう あゝ

ふいに襲う通り雨は 涙のよう

心はどこで守ればいい?

「それは奇跡なんかじゃない」より抜粋

 

◆「涙のち晴れマーク」田村ゆかり

同じくライブで聴いた楽曲より。この曲自体は昨年リリースした「Candy tuft」に収録されている。

ゆかりんといえばの、アップテンポなラブソングで元気な一曲。

今年リリースされた「あいことば。」の話になってしまうけど、普段だったらしっとりしたバラードだったり、悲しい歌詞の曲もアルバムに収録されるのだが「あいことば。」はほぼ全ての曲が明るく元気な曲だった。

コロナ禍でどうしても暗く落ち込みがちになってしまう心に、コロナという不安因子を一切吹き飛ばすような明るい楽曲が自然と心の緊張を解きほぐしてくれた気がする。ライブの中でも、明るく元気にこの曲をゆかりんが歌っていて、やっぱりライブは楽しいと思わせてくれた。


Yukari Tamura「YUKARI TAMURA LOVE ♡ LIVE 2021Airy-Fairy Twintail」Sep 25-26, 2021 For J-LOD LIVE - YouTube

今回のツアーのダイジェストムービー。一回しか参加出来なかったことが本当に惜しいくらいいいライブだった。今の田村ゆかりの魅力がめちゃくちゃ詰まっている動画なので全世界の全ての人間に見てほしい。ホントに信じられないくらいかわいくてキラキラしてるから。また、来年もゆかりんに会えますように。

 

◆「23rd Monster」浜崎あゆみ

 あゆが新曲を出してくれるということだけで嬉しかったりするのだけど、更に一段階かっこよくなっていて感動した。コロナ禍になって、いい意味でそれぞれの本質的な部分が試されるようになったと思う。あゆのかっこいいところは他者を試したり、外側から観察するようなことはしない。いつも、あゆ自身が真ん中にいて同じ境遇の中で歌っている。自分も当事者だとちゃんと思っているところが、この曲でも出てるし「浜崎あゆみ」が信頼出来るところだと思う。


浜崎あゆみ / 23rd Monster - YouTube

 

■7月ー9月

 世間ではコロナの感染者数がピークを迎えていたが、11月くらいまでは自分の心が穏やかだった気がする。仕事で色々と任せられる業務は増えていたが、前職よりも緩く取り組めたので負担を感じずに済んだ。

数は多くはないものの映画をみたり、本を読んだりもできたのは良かった。ただ、ライブで数回遠出をした程度(しかも関東圏内)だったので、どこか遠くへ旅行にい行ったり新しい刺激みたいなものを欲していた部分もあった。人間ひとつ何かが叶うと、新しいものを求めてしまって欲深いななんて思っていた。

 

●聴いていた音楽●

◆「美人」「ダリア」ちゃんみな

 少し時期はずれているが、今年リリースされたちゃんみなの3rd singleとフルアルバム「ハレンチ」は良く聴いていた。世間のルッキズムを正面から歌った「美人」はちゃんみなを代表する一曲になったと思う。こんなにも新しいことを音楽に取り入れて、見るたびにメキメキと成長していく彼女は凄い才能の持ち主だと思う。もちろん、才能だけでなく努力もしているのだが、自分の見せ方を上手くプロデュースしているところは流石今のZ世代といったところか。「美人」のシングルに収録されている「ダリア」という曲がめちゃくちゃかっこよく、PVでは「美人」のあとに繋がるように流れる。「美人」とはまた違った力強い声で、彼女の本当の姿はこちらの曲なのではと思うほど。ホラーテイストで面白くならずに、ちゃんと怖い曲が作られている。


ちゃんみな - 美人 (Official Music Video) - - YouTube

SaweetieとDoja Catのコラボ曲にもゲスト参加しており飛躍的な活躍っぷりをみせてくれた。めちゃくちゃかっこいしアガる一曲。


Saweetie - Best Friend (feat. Doja Cat, Jamie & CHANMINA) [Official Lyric Video] - YouTube

 

かと思えば、ロマンチックなラブソングもちゃんと歌えるから凄い。


ちゃんみな - 太陽 (Official Music Video) - - YouTube

◆「瞬間最大me feat .の子(神聖かまってちゃん)」大森靖子

 靖子ちゃんが他のアーティストに提供したり、コラボした楽曲だけを集めた「PERSONA #1」が凄く良くて、靖子ちゃんが他の人に歌ってほしくて作った曲を改めて靖子ちゃんが歌うと、こうなるのかと驚かされた。10曲目の「無幻クライマックス」なんかは°C-uteが歌っている原曲が大好きだったので、アイドルたちとは正反対のMIKEYの低い声が入っていて面白かった。

アルバムの中でも「瞬間最大me」は今年一年元気をもらった曲だった。歌詞を噛み締めて聴くと、シンプルに今を生きてて良かったと思うし、めちゃくちゃ軽率に逃げたくなる瞬間は訪れるけど、靖子ちゃんいるし逃げるのはもうちょっと後ででいっかなーってなる。痛い事とか嫌だし傷つきたくもないけど、どうしても傷ついたり痛みを感じたときに、この曲を聴いている。


大森靖子『瞬間最大me feat. の子(神聖かまってちゃん)』Music Video - YouTube

 

■10ー12月

 10月3日には「ayumi hamasaki ASIA TOUR 2021-2022 ~23rd Monster~」幕張メッセイベントホールに参加。やっぱりアリーナクラスの会場で見るあゆのステージは本当に夢の世界に入ったようで、何度体験してもドキドキしてしまう。アリーナ席のステージから比較的近い席だったのだが、歓声禁止という状況の中でもあゆが近くのステージに登場した瞬間には周辺のお客さんも含めて「きゃ!」と一瞬歓声があがっていた。改めてみんなあゆのことが大好きなんだなとほっこりした。初めて歌う曲が多く、アジアツアーという規模の大きいステージに面白い構成で挑むあゆの本気を感じた。

 12月に入ってから職場の人間関係に悩むようになってしまい、久しぶりに精神的に参ってしまった。私の場合、自分の中で危険信号を察知できる基準があって。

それは、映画館で映画を観ているときに、映画に集中出来なかったり別の事を考えてしまうと限界だと感じる。それが例え考えすぎと言われても、実際に自分の好きなもの大事な時間が侵食されていることが良いことなはずはない。

だからといって、職場に悩みを言えるような状態ではなく、本当に誰も信用出来ない環境だった。そんな中でパートの看護師さんが私と全く同じ悩みを抱えていたと知って相談にのってもらった。そこから、上司や会社に話を伝えることができ、すぐに違う環境に移してもらうことができた。正直、まだまだ不安な事ばかりだけど、ここからは自分の腹を括って踏ん張るときだと思う。人に悩まされたけど、最後の最後に人に救われた時でもあった。

 

 最後に、12月30日に代々木第一体育館にて開催された「ASIA TOUR 2021-2022 ~23rd Monster~」に参加してきた。

セトリは幕張公演と同じだが、あゆの曲がスッと自分の中で昇華された気がする。色々考えていたのだが、今の私に必要なものがシンプルで単純なものだからだろうか。ツアー途中の名古屋公演で怪我をしてしまい体調不良から回復したあゆが笑顔で歌っていて安心した。プロ意識の高い人だから痛みがあっても上手く隠しているだろうけど、柔らかく優しい表情は嘘ではないだろう。あゆもライブを楽しんでいて嬉しかった。

 

 個人的に今年は乱高下が激しくて、いつも何かをずっと考えていた気がする。正直、あまりいい一年とは言えなかったかもしれない。あゆやゆかりんにも久しぶりに会えたし、好きな事を自由に出来ていたと思うけど、ずっと心は辛かったしさみしいままだった気がする。

来年はどんな年になるだろうか、いい一年だったと言えればいいな。

さようなら、2021年。

11月に読んだ本

 今年もあと5日というところで、このブログを書いており夏休み最終日に一言日記を書いている小学生の頃を思い出した。絵を描いたり作文を書いたりすることは割りと真面目にやっていたけど、一言日記や計算ドリルのようなものはいつも先伸ばしにしていた。何かをコツコツ続けるのがどうも苦手みたいだ。

 

■『闇祓』著:辻村深月

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 社会人になって世の中には本当に色んな人がいるということを知った。いい人、悪い人、色々いるけど大概の人は大体優しいし、例え嫌な人だったとしてもどうでもいい人ということで自分から距離をとれる。

だけど、至極まれに「邪悪な人」が存在する。

 

 【闇ハラスメント・闇ハラ】精神、心が闇の状態にあることから生ずる、自分の事情や思いなどを一方的に相手におしつけ、不快にさせる言動、行為。本人が意図する、しないに関わらず、相手が不快に思い、自分の尊厳を傷つけられたり、脅威に感じた場合はこれにあたる。

 

 恐らく「闇ハラ」なる言葉は本書の造語だと思うが、それにしてもピンポイントでうまいところをついた言葉だと思う。細かく読み説いていくと「闇ハラ」は「パワハラ」や「モラハラ」に分類されると思うが、「闇ハラ」の怖いところは他人を操ろうとする悪意が見えにくいからだと思う。

 1章の話ではお人好しの委員長・澪がクラスに馴染めない転校生の面倒をみるのだが、転校生の言動がどうもおかしく恐怖を募らせていく。その事がきっかけで澪は部活の先輩と付き合うことになる。しかし、次第に優しかった先輩がモラハラめいた態度に変化していく。

1章の話は分かりやすいが実は澪を支配しようとしていたのは先輩で、その先輩こそ他人の家に入り込み悪意を植え付ける存在だったのだが、2章3章と読み進めていくとより呪いにも似た悪意の形が明かになる。

 この話はもちろんフィクションだけど、無意識にかわざとなのか、現実にも他人を支配しようとしたり操ろうと焚き付けてくる人間は存在する。難しいのは人間としての勘みたいな部分でしか感じられず、その事を回避することも糾弾する事も出来ない。他人に言えば、「考えすぎ」と相手にされない事の方が多いかもしれない。

段々と書いているうちに陰謀論めいてきたが、現実にも他人を支配しようという野心をもった狡猾な人間がいると思う。それがなにより怖いし邪悪だと思う。人間が本能的にしか感じ取れない目に見えないものを、上手く物語にしている面白い小説だった。

 

■『戦争とバスタオル』著:安田浩一 金井真紀

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 映画でも本でも戦争の話というと、ついつい距離をとりたくなってしまう。悲惨な歴史に向き合うことはとても大事なことなんだけど、知れば知るほど辛くなってしまう。

【風呂から覗いた近代史】をテーマに、戦争で「加害」と「被害」の交差点となった地に赴き温泉や銭湯に浸かる。お風呂で体を溶かしながら、その土地に残る戦争の痕に心を向ける。

恥ずかしながら戦時中日本がタイで何をしていたのか、どのように人間を傷つけていたのかを初めて知った。

タイのジャングル奥地にあるヒンダット温泉は、戦時中日本人が開拓した温泉だという。当時、兵士として現地にいたであろう日本人は温泉に浸かりながらどんなことを考えたのだろうか。

 本の中では日本国内の軍事施設にも訪れている。印象的なのは広島県にある大久野島の話だった。戦時中は毒ガス兵器の島として、近隣住人にも何を作っていたか秘匿されていた島だ。

大久野島でガス兵器製造の仕事に携わっていた、男性の方の話がとても印象的だ。14歳にして人を殺すための兵器を作ることを覚えさせられ、95歳になった今でも毒ガスの科学方程式が暗唱が出来る。作中では彼の残した製造過程を記録した鮮明なメモも見られる。彼が語る戦争中の鮮明な記憶と兵器を作ったという罪の意識は文章からも痛いほど伝わってくる。

最後に、毒ガス兵器を作っていた男性は、「自分は戦争によって鬼にされた」と語る。鬼にされないために、歴史を語り歴史に耳を傾けていなくてはならない。

10月に読んだ本

正直これを書いているのは12月の中旬なので、10月に何をしていたのか何も覚えてない。

忘れちゃうのから記録として文章にしているのに全く意味がない。

しいていうならば、10月3日に「ayumi hamasaki ASIA TOUR 2021-2022 ~23rd Monster~」に参加してきた。

コロナ禍になってあゆに会いに行くことが、こんなにハードルの高いことになってしまったことが少し悲しくなってしまった。この頃は大分コロナが落ち着いていたが、外に出ることへの気持ちがを作るのがなかなか大変になってしまった。

それでも、一緒に参加した友人がアリーナ席のステージから近い席をとってくれたので、ライブならではの瞬間的な熱狂、没入感を味わうことが出来た。ライブはやっぱり楽しい。

 

■『あたしたちよくやってる』著:山内マリコ


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 10月頃は長編SF小説を読んでいたので、気分転換にエッセイが読みたくなっていた。

小説はハマると時間も忘れて読み込んでしまい、楽しい反面とても疲れることがある。その点エッセイは短い文章野中で完結するので気兼ねなく読める。

今年の上旬に観た映画『あのこは貴族』の原作者、山内マリコさんのエッセイ+短編を一冊にまとめた本作。

今の時代「女の子らしく」生きなくてもいい、だけど「自分らしく」生きていくのはそう簡単じゃない。それでも、生きていかなくちゃいけない女の子たちが現実をサバイブするためにこの本はそっと寄り添ってくれる。

どんな女の子、女性に対して肯定することも否定することもなく、ただありのまま存在する通り書いてくれる。

 

実はクラスの中で一番頭がいいしずかちゃんだけど、一番は男の子じゃなくちゃいけないから敢えて手を抜いている。『しずかちゃんの秘密の女ともだち』

「街の奇抜な人」にあこがれる主人公の感情のうつろいを書いたショートストーリー『あこがれ』

1989年から現代にタイムスリップした女性が知ったこと『一九八九年から来た女』

音楽一家に産まれた女の子が音楽と共に生きていくさま『超遅咲きDJの華麗なるセットリスト全史』

など、みんながいい人ともいえないけれど、それがリアルだし人間らしい。

なにより面白いストーリーが現代を生きる女性の呪縛をそっと解いてくれる。

 

9月に読んだ本

夏の終わりくらいから仕事が忙しくなってきて、しかも職場の人間関係にも悩むような日々が続いた。

仕事の経験と知識が増えるたびに仕事を任せられるようになってきたが、自分は他人よりメモリが少ないらしく、すぐにキャパシティーを越えてしまう。そうすると、本を読む体力はどんどんなくなっていく。

 しかも9月の終わりに今年二回目の交通事故に遭った。交差点で信号待ちをしているときに対向車が歩道の縁石に乗り上げて横転してきた。幸いお互いに怪我もなく、私の車はなんとか動いたが相手の車がこちらに倒れてくる瞬間は今でもはっきりと脳裏に焼き付いている。

この事故の話を周りの人に話すと大体お祓いをしたほうがいい、職場の方角が悪いなんて言われた。

 

■『炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークⅩⅣ』


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 Kindlepaperwriteを買ったときに電子書籍で本は買わないときめていたが、今では思いっきり読書ライフを電子書籍に助けられている。特に『池袋ウエストゲートパーク』のように巻数が多くて毎年新作が出るシリーズは読みたいけど置く場所が...となっていたので電子書籍だと本当に助かる。

 

今回もP活、ぶつかり男、Uber eatsの配達員、フェイクニュースと炎上、と今の世相がリアルタイムに落とし込まれている。しかも、それがエンタメとしてちゃんと面白い。とりあえずこの一冊を読んでおけば今の社会を把握出来るんじゃないか。

それにしても、毎回新作が出るたびに様々な問題を反映しているが、それだけリアルの現実でも問題が起こっているということなわけで、その事に絶望も感じる。しかも、現実にはトラブルシューターのマコトも池袋のキングもいない。それでも、毎回読み終わると「案外世の中も悪いもんじゃない」とマコトが教えてくれる。

今回の刊行にあたって、石田衣良先生が「みんなヤンキー文化が好き」と言っていたが、確かに今度はマコトやキングが何をしてくれるのかワクワクしながら読んでいる。トラブルに巻き込まれながらも、池袋の町中を自由に駆け回っているマコトの姿は時代が変わっても、とても眩しい。

 

8月に読んだ本

 夏は暑いというだけで気が滅入るのに、今年はコロナの感染者は増える一方だし、ツイッターを開くと暗いニュースばかりで余計に気持ちが落ち込んでいた気がする。

エアコンの効いた部屋にいても本を読む集中力は生まれなくて、読書は夏には向かない。

 

◾️『ボーイフレンド演じます』著:アレクシス・ホール


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 偶然、本屋さんの新刊コーナーに平積みされていて出会った一冊。

 ロックスターの両親をもつせいでいつもパパラッチに追いかけられ、数々の痴態を撮られてきたルーク。慈善団体の職員という立場にはその私生活が不適切なため、上司から信頼できるパートナーを見つけるようにと釘を刺される。

そこで候補に上がったのは真面目で勤勉な法廷弁護士のオリヴァーだった。

 

 まず、主人公の両親がロックスターなのはイギリスっぽい(本作はイギリスの作品。これが日本だったら伝統芸能の演者だったりするのだろうか)

作中も日本人にはなかなか馴染みのないブリティッシュジョークが多い。それでも、ひとつひとつに解説をつけてくれているのでありがたい。ハリーポッターにちなんだジョークなんかもイギリスだなぁとか思った。

 正直ルークがいくら酔いつぶれて醜態をさらそうが、悪いことをしてるわけじゃないんだし私生活は好きにすればいいじゃん...マトモな恋人がいるからってその人がマトモかどうかの判断には関係ないだろと読んでいて思って、欧州とかってもっとプライベートと仕事がハッキリ分かれているものだと思った。読んでいて日本のBL漫画みたいだなぁとか思った。

それとも、海外はカップル文化というし恋人がいるかどうかがその人を判断する材料なのかな。結局、読み進めていくとルークの勤める慈善団体が保守的な富裕層に支えられているのが分かるので、遊び人というだけでなくゲイであるということにも眉を顰められるような仕事だったのだけど。

 

正直、色々最悪な人たちにガツンと言い返してスカッっとさせる演出はあまり好きでないのだけど、ルークがオリヴァーの両親のルビー婚で親族たちに言い返したところは思わずグッときた。はじめは全くうまくいかず噛み合わなかった二人が、物語を読み進めているといつの間にか相手がピンチの時に必ず支えあうようなカップルになっている。

オリヴァーの叔父が、オリヴァーがゲイであることを面白いことであるかのように揶揄したところは読みながら一緒にムカついていた。

それでも、オリヴァーが両親を含め親族のことを悪く言わないところに、人として本当に感謝しているのだとよく伝わってきた。家族との関係を変えることは難しいことかもしれないけど、いつかオリヴァーが本当の意味で家族と向き合うことができたならいいなと思う。

 

 それと、ルークの友人たちが個性豊かなところも魅力的だった。往年のラブコメ映画などでは「マジカルゲイ」問いう言葉が生まれたが、ゲイが主人公ならその親友は誰なのか?となる。答えは「ヘテロもゲイも色々いる」だ。

作中でオリヴァーとの関係が拗れたルークが言った「ぼくがショックから立ち直るのをいつも助けてくれなくてもいいんだよ」という言葉に対して、親友のブリジットは「友達ってそういうものでしょ。お互いに相手がショックから立ち直るのに手を貸したり、トイレではいているときは髪をもちあげたりするのよ。」と答える。相手がピンチのときに手をさしのべてくれる親友はなにより尊い存在だ。

 本作はルークとオリヴァーが付き合うところで一旦終わるのだが、どうやら本国では続編も刊行予定だということで続きを読めるのが楽しみだ。

そして、欲を言うとこの作品のようにラブコメでしっかり楽しいけどロマンスもしているレズビアン小説が読みたい。